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シリコンMD
2007年11月29日
 
メモリーやハードディスクによるミュージックフレーやーの登場によりポータブルMDは主要な役目を奪われつつある。しかし今後もまだしばらくは使われ続けていくだろう。最終的にMDがその役目を終えるのは、大衆的なオーディオ機器の記録メディアとしてメモリーやハードディスクが一般化したときだろう。ミニディスクという記録メディアの制限を受けるMDはメモリーレコーダーの普及により、録音機としてもDATと同じ運命をたどって最終的に消滅すると思われる。しかしMDの持っている独自のコンセプトは、現在でも他の機器で置き換えることができないものがあり、ボクがすっかり一般化してしまったメモリーレコーダーではなく、いささか時代遅れで登場の好機を逸してしまったHi−MDを導入した理由の多くもそのあたりにある。
MDならではの独自性というのはいくつかある。
 ・楽音を録音する録音機器としては不足のないクォリティがある。
 ・歴史が長く高い完成度と機能性、信頼性を持っている。
 ・メディアの制限から来る限界に近い小型軽量さである。
 ・録音時のバッテリーの駆動時間が長い。
 ・独自の性能の良い圧縮方式を採用している。
 ・気軽に導入できる価格帯である。
残念ながらこのすべてを満足できるメモリーレコーダーはまだ見当たらない。
16bit,44.1kHzのリニアPCM録音ができるHi−MDはもちろんだが、旧来のMDでもごく普通の楽音を録音する限りにおいてはCDに遜色のないクォリティを持っている。ハイビット・ハイサンプリングレートの録音が当たり前のメモリーレコーダーに比べればかなり見劣りするスペックだが、一般の人にとってはこれでも十分過ぎる性能だろう。
MDは登場してからの歴史が長く世代を重ねているので、機能的な面での完成度は高く使い勝手にも大きな不満はないし、十分な信頼性がある。
携帯性ではさすかにボイスレコーダーの及ばないが、本格的な録音機としてはもっとも小型で、ポータブルプレーヤーとしての要求から無駄な空間を省いた限界に近い大きさとなっている。バッテリーでの駆動時間の長さも他の録音機にはほとんど例のないもので、一日中安心して録音していられるくらい十分なものだ。このメリットは意外に大きいのである。
MDは独自の圧縮録音方式を採用している。これは一見不利に見えるかも知れないが、録音機として見るかぎり何の問題もないし、優れた圧縮方式を自由に採用できるのは大きなメリットである。パソコン上にデーターを取り込むことを前提にすれば、録音フォーマットは簡単に変換できるからだ。価格の面でも十分こなれていて気軽に導入できるので、生録の底辺を広げてくれている。
これらはMDが長い歴史の中で完成してきた、他の録音機にはない独自のコンセプトなのである。メモリーレコーダーやハードティスクレコーダーはある面ではMDよりはるかに優れた部分もあるのだが、それ以上に不満な部分がまだまだ多い。メモリーレコーダーが次々と登場していく中で、MDのこうした優れた特質が失われていくのは大変残念なことだ。
そこでシリコンMDなのである。MDのコンセプトを持ったメモリーレコーダー。いまさら多くのメモリーレコーダーで採用されているリニアPCMやmp3のフォーマットに拘束される理由はまったくない。ハイビット・ハイサンプリングレートに対応した高音質の圧縮フォーマットを採用することも可能なのだ。メモリーに制限がある現在では、とくに可逆圧縮は積極的に採用しても良いと思う。結果的にパソコン上から共通性のあるファイルとして見えれば最良だが、あとでソフトでフォーマットを変換してもかまわない。現在の技術とメモリーというメディアはMDの持っていた特長をさらに完璧なものにしてくれるだろう。非常に残念でならないのは、これが現在でも実現可能だということだ。PCM−D50の登場を目にして改めてそう思った。じつを言うとボク自身、いずれはHi−MDの後継機として導入したいものだと大いに心待ちにしているのである。
 
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