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いまさらHi−MD?
2007年11月22日
 
MDの後継機をどうするかというのはずいぶん前から悩んでいる問題である。当然メモリーレコーダーという選択が浮かび上がってくるのだが、今ひとつ食指が動かない。決定的なメリットがないのである。ある面では非常に魅力を感じるのだが、不満な面や不利な面も多い。メモリーレコーダーはまだまだ過度期の真っ只中にある。それを強く感じたのはPCM−D50の登場だ。これまでのメモリーレコーダーと比べて驚異的ともいえるバッテリー駆動時間である。これには大いに驚かされた。初めて見たときは何かの間違いかと思ったくらいである。おそらく今後他のメーカーに大きな影響を与えていくだろう。ただし時間がかかる。たぶん数年は待たなければならない。
とはいえディスクを大量に浪費しながら、現用のMDを使い続けていくのは将来的にますます不利になってくる。そこで最終保存メディアの変更を考えてのMZ−RH1の導入となった訳だが、Hi−MDそのものが1メーカーが生産するのみ、しかも2機種あった録再機も今や1機種を残すだけとなっている。メディアやサポートする記録フォーマットの変更がない限り、メモリーレコーダーに比べてますます不利になっていくのは目に見えている。将来的に見るとあまり魅力のないHi−MDだが、現状では必ずしもそうとはいえない面もある。
個人的にMDの後継機に求めるのは、小型軽量、取扱い簡便、長時間録音、長時間のバッテリー駆動。保存メディアが安価、あとできれば録音のクォリティーが高いことと安価なこと。小型軽量という点ではHi−MDが有利。かさ張る内臓マイクはボクには無用の長物だ。取扱いの簡便さではほぼ同等、ただデーターの転送時間では実時間の4分の1弱〜3分の1強程度とHi−MDが不利。録音時間もHi−MDが不利だが、中間保存メディアの単価あたりの録音時間では有利。もっともこれはリニアPCMでの話で、圧縮録音では大差なし、というかいずれも持て余すほどだ。バッテリー駆動時間ではHi−MDが少しだけ有利、ただ間歇的に大きな電力を消費するので、アルカリ電池やニッケル水素電池よりもHi−MDのリチウム電池の方がかなり有利になるはずだ。実際にデジタルカメラでは安定した電力を供給してくれている。保存メディアは最終的に同じになるのでどちらでも同じ。気になる録音のクォリティーだか、リニアPCM16bit,44.1kHZしかサポートしていないHi−MDに比べ、ほとんどのメモリーレコーダーは24bit,96kHzをサポート。明らかにHi−MD不利、かというとアナログ部分の能力もあるので必ずしも一概には言えない。性能の悪いマイクアンプでは単なるデーター量の水増しになりかねない。このあたりは情報が少ないので自分で買って確かめてみる以外にないのが残念なところだ。極端にダイナミックレンジの大きい音源ではなく、わりと平板な音源の録音が主なので、ハイビット・ハイサンプリングレートのメリットが出にくいともいえる。また24bit,96kHzとなると録音時間の点でメモリーレコーダーの利点が少なくなる。
MZ−RH1 2007年11月20日よりMDの後継機として2台を導入。最も新しいHi−MDの録再機であり、いまも唯一生き残っている録再機である。他のMDにはない独特のデザインで操作部と表示部が一辺に集中しており、超小型のデスクトップ機といった感じである。ポータブル機としての使い勝手は必ずしも良くないが、逆にケースに入れ首や肩から下げての録音では他にない使い勝手の良さがある。録音モードはリニアPCM44.1kHz16bit、ATRAC3PlusのHi−SPモード(256kbps)、Hi−LPモード(64kbps)に加え従来のMDのATRACのSPモード、ATRAC3のLP2、LP4の各モードをサポートしている。録音性能は従来のMDを継承しているが、録音ボタン一発で即座にマニュアルモードの録音できるようになったのは便利。パソコンと連携してのデーターの転送や、ミュージックプレーヤー的な用途も重視され、再生モードはリニアPCMの他にATRAC3Plusの5つのモード、ATRAC3の3つのモード、MP3(128kbps)をサポートしている。1GBのHi−MDディスクではリニアPCMモードで1時間34分、Hi−SPモードで7時間55分の録音が可能。リチウムイオンバッテリーによる録音時の駆動時間は、リニアPCMモードで6時間、Hi−SPモードで9時間である。なお録音データーの取り込みは付属のソフトから行ない、WAVファイルへの変換もこのソフトから可能である。
などなど、いろいろと訳の分からない理由を並べ立てたあげくの選択なのだが、最終的にボクがMDの後継として導入したのはHi−MDだった。理由はすでに1台のHi−MDが手元にあること。その予備機という意味もある。もう一つはメモリーレコーダーを導入しても数年後には必ず買い換えることになるというのも大きな理由。正気も沙汰の限りというか、年寄りのクサい分別というか、常軌の急カーブで曲がり損ねて脱線というか、何だってまたいまさらHi−MDなんか買うんだ!、とお叱りを受けるような話なのである。宇宙船のコンピューターに最新のOSを搭載しないのと同じ心理?。とにかく一般的とは言えないので、とても人には勧められない。もし録音機を新たに買うのだったら、数年で買い換えることを考えてもメモリーレコーダーを勧める。2万円台前半から良質でしかもマイク付きのものがある。こちらの方がどう考えても無難な選択だ。導入したHi−MDはMDのデーターの転送も一気に引き受けるので、これまでのMD以上にコキ使われることになりそう。コイツが寿命を終えて引退する頃には後継となるメモリーレコーダーも登場していることだろう。そう、期待している。
そんなわけで、今2台のMZ−RH1が手元にある。いきなり録音に飛び出したいのをグッと我慢して、まず何よりも先に手をつけたのがストラップの取り付けである。これは最優先重要事項、重大実施項目だ。現に一度落下させ、一度はどぶ川に水没させた経験がある。用心第一。うっかり者のボクにはぜひとも必要なアイテムなのである。トングという、パン屋さんで客がそれぞれに自分用のパンを分捕るために使う道具からステンレス製のバネを取り出し、ダイアモンドカッターで切り出して加工。これを両面テープでボディーの裏面に貼り付けて、携帯電話用のストラップを取り付ける。最初は穴の開いたプラスティック製の小片を側面に取り付けようと思って作り始めたのだが、曲面で加工が面倒な上に取り付ける部分の強度が弱いのであきらめた。長時間吊るすような使い方は不安だが、少しくらいならぶんぶん振り回しても大丈夫。ちょっと小さい気もするので別の材料を買ってきたら今度は大きすぎた。一度貼り付けたら二度とはがせなくなりそうだ。切り縮めるのも面倒なのでまだ製作はしていない。このまま使ってしばらく様子を見てみよう。落ちたら作る。
慌てて録音に出掛ける前にまずはストラップを取り付ける。うっかり者のボクにとってこれは必須のアイテムだ。トングという食品を挟む器具のステンレス製のバネを取り出して、ダイアモンドカッターで切断。同じくダイアモンドツールで穴を開け、ダイアモンドやすりとサンドペーパーで形を整えて仕上げる。材質が硬く普通のドリルややすりではとても歯が立たない。これを両面テープでMZ−RH1の裏面のネジに近い位置に貼り付け、携帯電話用のストラップとクリップを取り付ける。ポケットに入れての録音や、野外でのセッティングには万一の落下防止用とし大変安心感がある。ただ本体の足の高さよりわずかに厚みがあるので、卓上の使用では少々ガタができてバランスか悪くなってしまったのは残念だ。
さっそく使ってみての感想だが、やはりこれは小さなディスクトップマシン、ミニチュア版の据え置き機なのだ。卓上での使用を重視、野外の録音にはかえって使い勝手が悪い。録音に出るときに小さな折り畳みの椅子と机を持って行ってセットすれば使いやすくなるが、毎回そんなバカなことはやっていられない。しかし欠点は利点でもある。逆に胸のポケットに入れたり、ベルトをつけたケースに入れて肩や首から吊るしての録音には非常に便利だ。表示と操作部が上部に集中しているので、マイクを片手に持っての移動中でも空いた手で操作や確認ができる。手に持つと左側に来て邪魔になるマイクジャックの位置も、こういう使い方ではがぜん有利。マイクを持ちながらの移動録音には大変重宝である。ケースを工夫すればディスクの交換でさえ肩から下げたままできそうだ。普通のデザインのMDではとてもできない使い方である。てもなんだか巨人が幼稚園児用のポーチを下げて歩いているみたいでみっともない気もするな。ケース用に何か良い材料はないかと物色中。見つかったら早速作ってみたい。
肝心な音質だが、アナログ的はこれまでのMDを躍襲しているようだ。ただ個体差によるものと思うがノイズは僅かに多い気がする。リニアPCM録音と圧縮録音とはどの程度の差があるのか、これは正直な話、もう少し時間をかけてみないとよく分からない。一聴して分かる差が出るようではMDの存在価値はない。特にありふれた楽音での判別は不可能に近いので、リニアPCM録音自体ほとんど無意味といってもいいくらいだ。それでは何のためのリニアPCMモードなのかというと、環境音の中にはMDには厳しい音源がいくつもある。そういう音を録音すると圧縮録音では致命的な劣化を起こし、はっきり分かる差が出る。こんな時はリニアPCMが威力を発揮する。何回か録音してみた結果では、思っていた以上に微妙な差が出る音源があるようだ。ただその差がはっきり分かるような音源はそんなに多くはないと思うので、Hi−SPモードでの長時間録音のメリットも大いに生かしていきたいと思っている。ビットレートが減少したにもかかわらず、Hi−SPモードではむしろ音質は向上しているような印象だ。従来のLP2に相当するモードがなくなったのはちょっと残念。これはぎりぎり環境音が録音できるモードだったので、従来のLP4モードとほほ同じビットレートのHi−LPモードでは環境音の録音は音質的にちょっと無理だ。しかしLP4モードでは破綻していたのが、とりあえず破綻なく録音できてちゃんと立体感も出るのは驚くべきことである。搭載されているATRAC3plusに関してはMP3よりもかなり高音質ようだ。結局のところ最終的な保存メディアが変わることと長時間録音できるようになった以外、大半は今までとあまり変わり映えのしないという感じのHi−MDの導入なのだった。これはまた予想していたことでもある。
バッテリー駆動時間については、リニアPCMモードでは少し不足気味だ。外部からの電源の供給がUSBになって、いざという時に乾電池で気軽に電源を補給できなくなった。そのため予備のバッテリーを購入の予定である。言い忘れたがこのバッテリー、かなり高価だ。これは不利な点。その代わり外部からUSB経由で5Vの電源を供給すれば数十時間以上の駆動も可能だ。これは単三×6個から気軽に定電圧化するか、それとも単三×2個からステップアップするか。なるべくならあまり大掛かりにはしたくはないが、乾電池や充電池も使えて長期間の取材には便利かも知れない。
そんなわけで、ゆるゆると湯船に浸かりながら、これからのHi−MDの活躍を楽しく夢見ているのである。今さらHi−MDだなんていい加減にしろ!。どこからかそんな声か聞こえて来そうな気がする。ええ、ええ、いい加減にしますとも。でもこれは本当にいい湯加減だ。こうしてオイラの録音はますますいい加減に続いていくのである。
 
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