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ナマロク機としてのMD
2004年3月24日
 
屋外での録音用としてずっとDATを使ってきた。必ずしも全面的に信頼しているわけではないが、数少ない選択枝のひとつとして、最も有力な候補である。その選択枝のもう一つの候補としてMDがある。価格的にも音質的にもカセットテープレコーダーのメリットが少なくなってきた今では、DATの次に選ばれるのはMDといってもいい。ところでこのMDの実力はどうなのだろうか。
じつはMDを使い始めたのはごく最近の事なのである。それまで5台のDATを使ってきた。音質面で大きな不満はないが、やはり気になるのは大きさとバッテリーの駆動時間、それにテープの価格だ。
DATはいくら小さいといっても、結構な大きさと重量がある。ポケットに入れて持ち歩くのはやはり躊躇してしまう。バッテリーの問題もなかなか深刻だ。DATのバッテリー駆動時間はたいてい2時間から4時間。一日の録音には当然ながら予備のバッテリーは必須である。それでも汎用のバッテリーを使うものは転用がきくのでそれほど気にならないが、これが専用バッテリーとなると問題が絶えない。まずバッテリーの駆動時間である。たいてい2時間程度。一日の録音に備えるとなると持ち歩くバッテリーの数も増える。専用バッテリーは高価なのである。それは我慢するとしても、問題はバッテリーの充放電管理である。連続駆動時間が短いとなると、DATを持ち出す機会も限られてくる。使用頻度の少ないバッテリーはいつのまにか劣化してしまうのだ。フル充電したバッテリーを持って行くと、あっという間にバッテリー切れである。使おうと思った時には、すでにイカれてしまっているのだ。こうなるといくら充電を繰り返しても、もう元には戻らない。放電したまま置いておいたバッテリーでも似たようなものだ。こういった経験は一度や二度ではない。
DATのテープも最近はなかなか手に入らなくなったので困っている。オーディオショップはともかく、一般の家電店にはまず置いていない。それにテープも結構高価なので、湯水のように使うというわけにもいかないのである。
左はMZ−R909 谷川に転落1回。ドブ川に水没1回を経験しているが今だに健在。MDとしては無骨とも言えるデザインだ。しかし手にとってみると不思議と使いやすく、出かける時にはついついこちらを選んでしまう。

右はMZ−R910 デザインは洗練され液晶も見やすくなっている。バッテリーの駆動時間も3割ほど増加した。これ以降の機種と違って適度な重量感があり心地よい。両機種ともストラップは後付けである。
そこで気になってきたのがMDである。最近は録音兼用機でも3万円以下で手に入るようになった。型落ちの機種ならさらにたっぷりおつりが来る。ディスクの価格も以前に比べて随分下がって来た。なにしろ100円ショップでも売っている。大きさや重量とくれば、これはもう文句のつけようもない。バッテリーの駆動時間の長さも大きな魅力である。1回のフル充電で8時間は大丈夫。一日中持ち歩いても心配がないのは実に気楽だ。それにメモリー効果の影響がないのもありがたい。いつでも充電OK、これで面倒なバッテリーの充放電管理から開放されるのだ。
そういうわけで音質的には疑問もあったのだか、ついに購入にふみきったのである。最初の機種はSONYのMZ−R909、当時既に型落ちの機種でかなり格安で手に入れたものである。
さっそく録音して見たが、最初戸惑ったのはレベルメーターの貧弱さと、AUTOのレベル調整がデフォルトになっていることだ。しかし何度か失敗しているうちに、やがて慣れてしまい苦にはならなくなった。気になっていたストラップも取り付けた。MDでストラップの付いているものはほとんどないが、落下防止やポケットに入れて歩きながらの録音には必需品なのである。穴を空けたプラスティックの小片を強力な両面テープで貼り付け、携帯電話用のストラップとクリップを取り付けている。
こうして使っているとすぐに気になってくるのがマイクである。大きな人工ヘッドと三脚を持ち歩くのはどう考えても不釣合い。そこで小型の立体音響用マイクを製作する事となった。頭部を持たない小さな棒状のマイクである。重量が軽いので三脚も小型のコンパクトカメラ用で十分だ。これらを6、7枚のデイスクと一緒に小さなカバンに入れ持ち歩くようになった。これが実に軽快である。マイクの耐入力が小さく用途は限られるが、使える場面は結構多い。
単独で持ち歩く事が多いが、人工ヘッドとDATの組み合わせと一緒に持ち歩き、一度に2ヶ所にセットして録音と言う事も行なうようになった。こうなるともうワンセット欲しくなる。次ぎに購入したのが同じくSONYのMD−R910。これも当時型落ちの機種で、さらに安価で手に入れたものある。マイクももう一つ製作し、小型の三脚とバッグも買って来た。これが実に楽しく、4〜5ヶ月はこの2組のセットばかり持ち歩くようになってしまった。さらに調子に乗って2組のMDとマイクが入るバッグも買ってきた。とにかく気軽で気楽、しかも便利なのである。
ところで気になるMDの音質だが、どうなのだろうか。マイクアンプは明らかにDATより不利、ノイズもやや多い。といっても低感度のマイクを使用してレベルをいっぱいに上げた場合の話しで、比較的感度の高いマイクを使い普通に録音している限りではほとんど気にならない。
音質はというと、これは一年以上使ってみての感想だが、やはりDATと明らかな差をに感じる時がある。とくに広い周波数帯域を持つノイズ的な、しかも複雑に変化する音を録音した時である。露骨な破綻こそしないが、妙に音が整理されてしまった印象を受ける。乾燥してボロボロ崩れかかったスポンジケーキといった感じだ。極端に言えばハーフレートの携帯電話の音に似ている。音が不自然に単純化されて隙間ができ、情報が欠落しているのがありありとわかってしまうのである。MDにとって立体音響の環境音は、その欠点を暴き出すかなり厳しい音源なのだ。
とはいってもこうした現象が現れる音源はそれほど多いわけではない。大抵の場合DATとほとんど変わりない結果が得られるので多いに利用している。ディスクの価格が安いのもさらに拍車をかける結果となる。専ら100円のディスクばかり使っているのだ。その代わり湯水のように使う。時間さえあればいつでもどこでも録音しているのである。家にいる時はマイクを庭に放り出してずっと回しておく。これは結構楽しい。ごくたまにではあるが、非常に面白い音が録れることがあるのだ。信頼性も高く、これまでトラブルらしいトラブルにはお目にかかっていない。
そう言うわけでMDは今や必需品なのである。あまりに気軽なので、重い人工ヘッドとDATよりも、ついついこちらを持ち出してしまいたくなる。MDには心すべし・・・である。
 
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