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23Hours
2006年9月21日,22日
下旬に当てにしていた3連休はなぜか2日に縮小。2日間を目いっぱい使ってと考えていたが、こちらも4時間ほど短縮せざるを得なくなった。実質的に動けるのは21日と22日を合わせてわずか23時間。えーい、考えていても仕方がない、とにかく出かけてみよう。
到着は半家で、そこから帰路の駅となる土佐大正まで歩いてみようというもの。ただ今回は音はあまり当てには出来ない。もともと環境音は多くはないだろうという予想で、さらに滞在時間が短くなったので余裕はほとんどない。ただ歩き回るだけで終わりそうである。小さなバッグ一つの軽装備で行こうかなとも思ったが、結局標準装備となってしまった。
実は今回、切符売り場で少々手間取った。コトは切符売り場の職員さんの質問に始まる。「半家?、これ、なんて読むんですか」。「えっ、・・・?。し、知らない」。「・・・カシャカシャカシャ・・・カシャカシャカシャ・・・」。・・・どうやら答えが出たようだ。「なんて読むんです?」。「ハゲ」。ところがそのままバックヤードに入ってしまってなかなか出て来ない。後ろを振り返ると順番待ちの客の殺意を帯びた視線が目に入る。やがて出てきた職員さん、聞くと途中に他社の路線が入っているので切符が出せるかどうか調べているとのこと。またバックヤードに戻って相談している。そ、そんな。どうやら切符は無事入手できたが、ああややこしい。
Sample1.mp3 1分13秒 1.39MB 江川トンネルを迂回して。このあとは長い夜道を歩くことになった。人工ヘッド"Alqays"とTCD-D100で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
08:01出発。乗り換えの岡山駅でホームにやってきたのは、なんとアンパンマン列車だった。遠来の旅行客には珍しいのか、よく写真を撮っているところを見かけるが、まさか自分がこれに乗ることになるとは。目的地までは約6時間弱。ただ特急とは言っても3両編成のディーゼルカーで、乗客も少なくまことに気楽。なかなかに気持ちのよい快適な旅である。高松から高知まではさらに2両加わる。困ったのは食事だ。途中買えるような駅も車内販売もない。またまたいつものパターンだ。
13:22分に窪川で予土線に乗り換える。一両編成の電車でこちらもいたって気楽だ。平日の昼間なので乗客は少ないが、大半が旅行者なのには驚いた。電車の前に後ろにとカメラを片手に走り回る人もいたりしてこちらも気兼ねがない。でも腹ペコのおいらの隣りでおいしそうに弁当をむさぼるのだけはやめてくれ。昭和町に近付く頃から両岸の山腹は檜の植林で覆われるようになる。ただ明らかに川の下流に向かって下って行くのだが、だんだん険しい地形に変わっていくのは何だか不安な気分だ。
14:11半家着。下から見れば山腹といってもいいような位置にある駅で、長い鉄製の階段を下って道に下りる。まずは何と言っても昼メシだ。近くの売店であり合わせの食料を調達。あとはまっすぐに目的地まで向かうのだが、目的のある首尾一貫した旅は苦手なのが生まれついてのオイラの性格、すぐに横道にそれ、江川川を上って市野々の辺りまで行くはめになった。
途中道端の山の斜面に奇妙なものがあるのが気になった。例えは悪いがちょうど骨箱を一回り大きくしたような木の箱で、ちょっと窪みになった所の石の上なんかに行儀良くいかにも威厳ありげに収まっている。なにかの神様でも祭ってあるのかと思ったが、それにしては異様に数が多い。よく見ると箱に扉はなく下の方に小さな隙間が開いているだけ、しかもそこから小さな蜂が出入りしている。つまりはミツバチの巣箱なのだった。これが結構あちこちに置いてあって、知らない者にはちょっと奇妙な感じである。
権谷小学校の少し上辺りまで上って引き返し、もとの場所まで帰ってくるとすでに陽は傾きかけている。今日中には十川までたどり着かなければならないが、このままいけば到着はかなり遅くなりそうだ。ところが再び横道にそれてしまった。江川トンネルを通らず川沿いに迂回。途中で20分ほど録音していたら、とっぷり日が暮れた。曇り空に月も隠れてあとは真っ暗な夜道である。山道といってもいいような細い道路で、次の川平トンネルまでの3kmほどは、時おり車が通るのを除けば目に入るのは1km置きにポツリと一つ見える対岸の明かりだけ。さすがに人心地はしない。トンネルを抜けて民家の明かりが見えたときは、やっと人がましい気分になった。本当は川平トンネルを迂回して広瀬辺りを回ってみたかったのだが闇夜ではとうしようもない。
十川には意外と早く20:30過ぎに到着。まだ路程は3分の1を来たばかりだ。このままでは目的地に予定の時間までに到着するかどうか心配である。明日は04:00の出発としよう。
Sample2.mp3 1分12秒 1.37MB 河内の対岸にて。朝の7時前だが意外と静かである。人工ヘッド"Alqays"とTCD-D100で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
・・・と思ったのは昨晩のこと。昨日は昨日、今日は今日という言葉もある。今日のオイラが判断したのは眠い、だった。結局出発したのは5時過ぎ、辺りが明るくなりかけた頃になった。川霧はないが空はどんよりとした曇り空。山から立ち上る水蒸気のようだが、晴れるのかどうか心配だ。一日中曇り空ではつまらない。08:00までには昭和に着きたいところだが、途中またまた回り道。小野大橋を渡って昭和大橋まで対岸を歩いてみることになった。
ところが道はだんだん細くなり、舗装した道路はついには草の生えた細い砂利道に変わる。このまま途切れてしまうのかと思うとそうでもなく細々と続いている。対岸からでは分からないが、岸はすべて護岸工事がされていて道の左側はちょっとした断崖になっている。うっかり落っこちれば河原の石とご対面だ。かなりの大回りになるので予想外に時間を取られそうだ。もっともこうしたところをあちこち回ってみるのがもともとの目的だったのだが、なにぶんにも時間がない。川の曲がりが変わり畑と民家が見え始めた頃、気が付くと道はいつの間にか広い舗装道路に変わっていた。
昭和大橋を渡って昭和に着いたのは予定を少し遅れて08:30頃である。ここでやっと朝飯にありついた。天気もほぼ回復していい一日になりそうだ。あとは大正までだが、今回この区間がいちばん長い。あらためて地図で計ってみると途中1箇所くらいは回り道をする余裕はありそうだ。時間が取れたら浦越辺りで迂回してみよう。そこまでは国道を歩くひたすら単調な道程である。
大正まであと1時間という頃、予定よりもかなり早く進んだことが分かったので、また寄り道してみることにした。トンネルの手前で再び迂回、予土線の鉄橋の下を潜って浦越に入る。じつはここで初めて河原に下りてみた。水はわずかに緑がかった明るい乳青色。磯のような匂いがするので一瞬海に出たのかと錯覚した。岸辺は透明に見えるが中央はまったく底が見えない。ここで30分ほど録ってみたが、流れの音のほかはほとんど何の音もない。ふたたび鉄橋を潜って国道に出るまで、道の川側の斜面には低い位置から大きく枝を広げ、ひねくれ節くれだって枝分かれした大きな檜がいくつも見られる。ほとんど手を入れられていない木だが、育ち方でずいぶん違うものだ。
大正橋のところで国道を離れ街中に入るとすぐに売店が目に付いたので、昼飯代わりにでかいリンゴを買ったらこれには持て余してしまった。土佐大正駅には予定の時刻よりかなり前に到着。列車はまもなくやって来たが、ふと時刻表を見るとこんな時刻に発車する列車はない。なにか手違いでもあったのかと不安になってしまうが、ところがこれが帰りの列車なのだった。別にすれ違いの列車があるわけでもないのにずいぶん長い停車である。ホームに上がろうと思ったら観光客の一団がぞろぞろと降りてきて、そのまま駅前の観光バスに乗り込んだ。
13:15土佐大正発。やはり列車は空いていて、ほとんどが旅行客ばかり。実に気がねのない旅である。13:55窪川でふたたびアンパンマン列車の客となる。こちらも乗客は少なくいたって快適。帰路は5時間弱の旅となった。
というわけで何だか歩き回っただけで終わったような2日間だったが、流域の人口が少なく、見えるのは川と山ばかりといった環境にも関わらず、なんとなく妙に人間くさい土地といった印象である。環境音が豊かで特色があるという感じではない。録音としてはむしろ時期を選んで季節の風物や行事なども取り込んでいくと面白いという気がする。

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