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台風前日
2004年6月20日
ここしばらく遠出をしていないので、何処か行きたいところである。しかし前日から風邪をひいていてダウン状態、いい加減に熱もある。こういう時はなにをやっても身にならないのである。谷川で石の上から転げ落ちるとか、ドブ川に足を突っ込むとか、倒木に足を引っ掛けてすっ転ぶとか、ロクな目に会わないに決まっている。かてて加えて台風6号が接近中だ。というか間もなく直撃の状態である。はかない希望はあえなく消え失せた。そんなわけで今日一日は家で過ごそうかと思っていたのだが、朝外を見ると晴天である。雲は何となく剣呑な雰囲気、なのだがとりあえず風はない。今日一日雨は降らないだろう、と踏んで出かける事にした。といってもこの状態で無理は禁物、散歩程度に行こう。摂生して機材も小型マイクとMDだけにする。
それはいいのだが、行先がぜんぜん決まっていないのである。このところ忙しくて何も考えていなかった。そこで去年訪ねたことのある大谷川を再び訪ねてみることにした。JR赤穂線の伊里駅からこの川沿いに道を辿って行くと蕃山というところに出で、そこから谷に入って行くとすぐに正楽寺というお寺がある。小さな地図には出ていないのだが、現地に行ってみるとけっこうり大きなお寺である。山陽新幹線がちょうどお寺の裏手でトンネルに入る。大谷川はここからさらに直線状に4kmほど山の中に続いている。昨年はこの川の上流で録音していたのだが、にわかに空が暗くなり冷たい風が吹いてきたので慌てて山を下り、お寺の山門で雨宿りをさせてもらったということがあった。なかなかこの辺りでは滅多に出会わないような申し分のない夕立である。もちろん録音したのだが、マイクの耐入力不足とレベル設定のミスで歪みの多い録音になってしまった。そう言うわけで、途中で引き返してしまったこの川をもう少し上流までさかのぼってみることにしたのである。
Sample1.mp3 1分07秒 1.27MB 山の小さな流れ。小さな水溜りの傍には蛙が一匹住みついていた。小型マイク"Elk"とMDで録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
前回は伊里からだったが、今回は寒河から正楽寺へ抜けるコースを取ることにした。駅を出て川と街路を渡って進んで行くと、地図で見たのとはかなり違った印象である。ずいぶん静かな場所で車もほとんど通らない。道路が通り抜けており道も込み入ってるので、交通量が多くもう少しゴミゴミしたところかと思っていた。人家のあるところを過ぎると、舗装はされているものの、もうほとんど山道である。ただ残念なのは谷の反対側を切り崩し大きな道路が建設中であること。完成すれば環境はだいぶ変わってしまいそうだ。峠の頂上あたりに「山道終点」の立札があった。
少し下ったあたりで山から流れ出る水音が聞えたので録音してみることにする。道路から少し離れて山に入り、小さな流れの横にマイクをセット。道のそばの石に腰を掛けて時間を潰していると、車がポツリポツリと通り過ぎて行く。カーブが多いのでみんな模範的な安全運転だ。道の曲がり角から雉がひょっこり姿を現し、一声鳴いて山に駈け上がって行く。
道を下って県道に入ると、小さなわき道の前に「進入禁止、この先行止り」のどでかい看板がある。不信に思って入って行くと、Uターンしてもとの道に戻る、というかその手前で行き止まり。一体なんなんだ、これは。民家と田んぼのあるところを通って行くと、向こうの山から妙にメロディアスな鳥の声が聞えてくる。その下の大きな池の放流口のある川がいい雰囲気なので、降りて行ってマイクを立てた。放流口の真下は水流でえぐれて滝壷のようになっていて、わずかに水が滴り落ちている。
12時過ぎ蕃山に到着。交叉点の食料品店は閉店、こりゃ〜、また昼メシ抜きになりそうだ。道をV字型に折り返す様に上って正楽寺に入って行くと、パンフレッドを手に持った観光客が数名訪れていた。
Sample2.mp3 1分18秒 1.49MB 池の放流口の下で録音。じつに怪しげな場所だ。小型マイク"Elk"とMDで録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
川沿いに遡って行くと、早速「まむしちゅうい」の黄色い看板。でもこれはご愛嬌。こんなとこにはいない、・・・よな?。道が谷川に近づいた辺りから斜面を降りて行って適当な場所をさがす。谷川と言っても、ついこのあいだ山から転がり出た石っころ、岩っころがごろごろしているような荒れ果てたところで、苔生し歳月を経たという感じでは、まったくない。
すでに昼をかなり過ぎているので鳥の声もほとんどなく、流れの音だけ。あたりは実に静かなものである。時々上空を通過するジェット機の音が静寂を破る。ここで2時間ほど録音したあと、もう少し上まで登ってみる。谷を半分ほど来たあたりで、とつぜん砂利を敷いた道がぷっつり途切れ、あとは鬱蒼としたほんとの山道。ここから先はどこまで行けるのか分からない。地図では山を越えて向こう側の道路まで道が延びているが、いまどき怪しいものだ。谷川に入ってから100mほど進んで、再びマイクをセット。午後も5時を過ぎると、急に鳥の声が賑やかになってきた。
Sample3.mp3 1分05秒 1.24MB 正楽寺から1kmほど入ったの大谷川の中で。小型マイク"Esrit"とMDで録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
もうすぐ午後も5時半前。風も強く天候はますます険悪になってきて、時々雨粒が落ちるのを感じる。帰りの道を急ぐことにした。蕃山の交叉点まで下りてくると食料品店が開いていたので遅い昼食。しばらく立ち止まってどちらから帰ろうかとしばらく考えたが、再び元来た道を辿ることにする。集落の外れを上っていくと、農家の人に不信な眼差しで見つめられた。そりゃそうだ。こんな夕ぐれ時、台風も来るっていうのに、山の中に入って行くんだから。
峠の手前あたりまで来ると、突然上の方からガサガサという音。イノシシでも出たのかと思って見ると、鹿が2頭、あわてて切り通しの急な斜面を登って行く。まだ若い鹿である。どこへ帰って行くのだろう。そうだ、オイラも早く家に帰ろう。
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