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牧山辺り
2004年4月5日
今日は休日である。今月はめずらしく平日の休みが多い。当然のように生首とDATを担いで出かける事になる。いつもは大抵行く先の定まらない旅だが、今回はちょっとした目的地があった。牧石小牧山分校のあるあたりである。
半年ほど前この付近の環境に興味を引かれ、牧山から野々口まで川沿いに歩いた事がある。樹木は落葉広葉樹が多く、人間も自然によく馴染んでいて環境は悪くないのだが、困るのは川の両側に道路が走っていること。早朝から車の通行量が多く、しかも両側は山の斜面なので逃げ場がない。そういった中で数少ない録音可能なポイントの一つがこの場所なのである。
牧山駅で降りて道路沿いに川の左岸を上流へ向かって2kmほど歩くと、川を底辺として三角形に広がった土地に出る。バンガローが建ち並び、そこを北に登って行くと、三角形の頂点になる辺りが牧石小牧山分校だ、ここから先は山と畑である。
少し山道を登って振返ると前方には分校、その向うは民家も近い。川沿いに進んできたJR津山線が大きくカーブして後ろのトンネルに入っている。川沿いの道路からはわずか400mほどしか離れていないが、車の音はほとんど聞こえず意外と静かである。悪くないロケーションだ。こうなるとちょっとマイクを置いてみたくなってしまう。この時は日曜日の訪問だったが、分校の開いている平日に訪れてみたいと思っていた。
Sample1.mp3 1分32秒 1.75MB 朝の通勤列車である。頭部を持たない小型のマイクとMDで録音してみた。小型マイク"Elk"とMDで録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
ところが今年になって、この分校が廃校になるという記事を見かけた。全校生徒は19人とのこと。それ以来気になっていたのだが時間が取れず、今日やっと出かけることができたというわけである。当日家を出る時になって悩んだのだが、今回は人工ヘッド=DATのセットと小型マイク=MDのセットの両方を持って行く事にした。
牧山着6時26分。あたりはもうかなり明るくなっているが、川霧が出ていて視界は悪い。通勤の車がすでに頻繁に行き交っている。気温は8℃くらい、かなり寒い。川沿いに道をたどって目的地に着いたのは7時過ぎだ。まだ時刻も早いので、少し山の方に入り、道の傍に小型マイクとMDをセットして録音開始。アオバトの声がかすかに聞える。数回キツツキのドラミングの音。通勤時間帯なので列車の通過も頻繁だ。
そのうち時刻は8時を回ったが、相変わらず辺りは静かである。不信に思って下へ降りてみると分校にはだれもいない。通り掛かった散歩の人に聞くと、なんと先月の28日で廃校になったという。情報不足、一足遅かった。仕方がないのでこのあたりでしばらく過ごすことにする。9時を過ぎると霧も晴れ、文句のつけようのない晴天になった。
Sample2.mp3 50秒 979kB 池の辺で。こちらは人工ヘッドで録音。すでに午後3時を過ぎて、風も強くなってきた。そろそろ切り上げ時だ。人工ヘッド"Alqays"とTCD-D7で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
昼近くなったので山を超えてもう1,2ヶ所録音できる場所を尋ねてみることにした。前回は川沿いに歩いたので、この山越えの道は初めてだ。山道をしばらく登って行くとT字路に出た。一方は登りでもう一方は下り。当然ながら楽な道を選ぶ。えてしてこういう楽な道は取り返しのつかない最悪の場所に通じているものだが、降りてみるとちょうどトンネルの出口に出た。
ここの集落は入口が路線の土手で遮られていて、車の騒音の少ない場所の一つだ。民家の近くで人の声がしているので、MDで20分ほど録ってみたが、風が強くてレベルが上げられない。
路線の下を潜り、ふたたび川沿いに歩いて野々口までたどり着くと、もう昼過ぎである。もう一つ行ってみたいポイントがあったので、53号線に入り南に向かう。途中で右手に谷が開けているがここが目的地。谷の入口付近は工場などがいくつかあって騒音が大きい。ビニールハウスの調子の狂った換気扇が信じられないような音を立てて回っている。
ここから遡ること1.5km、谷の終点近く、大きな池の上まで来るとさすがに騒音は聞えてこない。午後ももう遅いが池の上を鳥が飛び交っていで結構賑やかだ。この場所は今回はじめて。池に水が流れ込むあたりに三脚をセットした。左手では子供が二人釣りをしており、右の山の上からは農家の作業の音が聞えてくる。20分ほど録っていると、後ろでビニールハウスの換気扇が回り出した。やがて風も強くなってきて、そろそろ本日も終了と言った頃合である。それにしても2組の録音機器を長時間持ち歩くのはかなりの重荷だった。そんなに重くはないのだが、バランスが悪いので非常に疲れるのだ。家に帰りついた頃にはすっかり胃を悪くしてしまっていた。
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