<< >> 過ぎ去った時からへ HOMEへ

 日常のありふれた音の記録です
2015年9月
2015年9月27日 9月も終わりになって気温が上昇し、夏のなごりを思わせるような天気。それでも雲はすっかり秋の様相だ。9月というと音の少ない月なのだが、このところ少しづつ10月の音に変わってきてはいる。気を良くして本日も朝からおなじみの場所へ。鈴生りになったアケビは満開状態。砂防ダムの前の谷川の水は水量も減ってかすかな音を立てている。下から上がって来る騒音も9時過ぎには聞こえなくなった。天気も言うことなし。でも音はやっぱり9月の音だった。
Sample.mp3 3分11秒、3.64MB 相変わらずの初秋の雑然とした音。それでも気付かない間に確かに秋は少しずつ深まってきている。人工ヘッド"Pelias"とPCM-D50で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
制作していたスピーカーは塗装を完了して実働状態に入っている。もっとも塗装といったって下地もなにもありゃしない、ただペタペタ塗りたくるだけ。あいかわらずの人後に落ちないひどい仕上げだ。それでも何とかやっつけてセッティングし、これで一件落着と思っていたら問題が二つ出てきた。一つは内部の共鳴。音道の方向の共鳴はほとんどないが、音道の対向面の間で共鳴が発生している。キンキンというかなり耳障りな音だ。吸音材は入れないつもりだったが、100円ショップで150円の座布団を買って来て、中からウレタンのスポンジを取り出し、適当な大きさに切り刻んで放り込む。厚さは18mmほど。しかしこれではまだまだ不足だった。もう少し厚手のものが必要。といってもわざわざ高価な吸音材を買って来るなんてのはケチケチ人間のやっていいことではない。だいいち口惜しい。何かいいものはないかと物色中である。
あと一つは音量を上げると片方のスピーカーからビリ付き音が発生すること。バッフルを指でたたいても同じように発生する。大きな音ではないがこれは致命的に耳障り。原因は調べなくても分っている。実は以前同じような経験をしているのである。こういうものはなかなか原因が分りにくい。このユニットのフレームの縁は、取り付けネジを締め込んでもバッフルとの間に隙間ができて、接触しない構造になっている。はずなのだが、どういうわけか微妙な接触状態になっていて、振動で接触を繰り返し異音を発生する。まさかと思うようなことだが、結構大きい音を発生するのである。これを止めるのはなかなか面倒だ。方法はあるにはあるのだが、できれば試したくはない。暴力的な方法なのである。これも考え中。

2015年9月23日 このまま世界が長い休息に入ってしまいそうな連休も慌ただしく終わり、今日が最後。天気も良いのでいつもの場所にフラフラと出かける。マイクをセットして道を歩いていると、ハリガネムシが自縛状態でのたくっている。こんなところで何しているんだか。道端の萩の花は満開。でも遠くで鳴く夏の葬送の声のような虫の声の他には何も音のない、どちらかというと退屈な朝。暖かくなるとしぶとく生き残っていたセミが最後の仇花を咲かせようと物憂げに鳴きはじめる。生き生きしているのは楽し気に飛び回るハエの音ばかり。一時間ほどして再び歩いてみるとハリガネムシはすっかり干からびてくたばっていた。
Sample.mp3 3分04秒、3.52MB ほとんど何も目立った音のない雑然とした時間。こんな雰囲気を録音するのは難しい。でも録音時には現場にいなかったのでボクには分らない。人工ヘッド"Pelias"とPCM-D50で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
実りの秋に先駆けてアケビが実をつけている。どういうわけか道端の5mほどの狭い範囲にまとまって木に絡まっている。それぞれ実の色や大きさ、葉の形が異なっていて3種類くらいありそう。じつを言うとアケビというのは食べたことがない。近くにほとんど自生していなかったからだが、さてお味はどんなものか。近くから枯れた植物の茎を拾ってきて竿を作りもぎ取る。開いた実の中には半透明のゼリー状の物体。なんとなくカエルの卵のようにも見えるし、大きな白い芋虫のようにも見える。なんだか不気味。手に取ると熟しすぎたバナナのような粘性があり、ねば〜。中にはイヤに艶々した黒い種子がみっしり。それではさっそく賞味いたします。あぐ、・・・・・。

2015年9月15日 一雨ごとに夏が遠くなっていく。今さらなことだがすでに9月も半ば、もう取り返しのつかないほど夏は遠くなってしまったのである。今日は朝から申し分のない秋晴れ、早速出かけたがなにしろ9月である。行く先々で予定変更。1時間近くうろつきまわって辿り着いたのは結局おなじみの場所。録音を始めたものの1時間経って気が付けば録音機はポーズ状態。これでは何をやっているのか分らない。すっかり気を悪くして一山越せば、なにやら楽し気なエンジンの音。田んぼの中でお年寄りがポンプで揚水作業をしているらしい。それではと早速押しかけて図々しく録音させていただいた。
Sample.mp3 2分21秒、2.70MB 前半は斜め前方から、後半は斜め後方から。今は随分のんびりとした音に聞こえるが、当時の人にはどう聞こえたのだろう。発動機の上から白く立ち昇る湯気は沸騰する冷却水。人工ヘッド"Pelias"とPCM-D50で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
お話によるとこのエンジン、というより発動機は昭和18年製。1943年だからすでに72年間現役で動いていることになる。両側に大きな重量級のフライホイールの付いた古色蒼然たる水冷式4サイクルエンジン。下部には丈夫な木の台座が取り付けられ、これも今はほとんど見かけなくなった川の中に立てる円筒形の大きなポンプを平ベルトで駆動している。昔は籾摺り作業であちこちに担いで行かれ大いに活躍したらしい。驚いたのはプラグやイグニッションのコードを除いてほとんど当初のままであること。プラグは規格が合わないのでアダプターを介して取り付けられ、コードは赤い合成樹脂製のものに替えられている。主軸の軸受けはメタルでグリスカップで給油。ピストンは上部に付いた硝子製のオイラーで油を点滴している。油断という言葉そのままでうっかりできないが、ちゃんと使えばずいぶん長持ちするものだ。イグニッションは発電機構が往復式。マグネットの吸着力とバネを利用して急激な磁束変化を起こし発電、これを断続して2次巻線に高圧を発生する仕組みのようだが今一つよく分からない。アメリカ製とのことだが銘板を見る限り日本製。当時は戦時中だったから輸入なんてできなかったのではないか。点火時期を調整するハンドルがあって逆転も可能らしい。吸気と吐出のバルブは後端に露出していて吸気バルブはバネだけ。クランクシャフトを半分に減速して吐出バルブとイグニッションをカムで駆動。再び増速してガバナーを回し、キャブレターに連結して速度調節をしている。冷却水を川から汲み取って上面の大きな穴から流し込み、専用のハンドルをクランクシャフトに取り付け、少量のガソリンをキャブレターに入れて起動。回り始めると燃料を常用のものに切り替える。定格速度550rpm、2.5馬力。実際に計ってみると400rpmくらいで回っていて実にゆったりしたもの。近くで聞くと排気音が結構やかましいが、ある程度離れるとむしろ最近のエンジン付きのポンプよりは余程静かである。昔は興味深げにいつまでも見つめていた子供もいたに違いない。またいつか訪ねる機会が来るまでずっと動いていて欲しいものだ。
▲UP 過ぎ去った時からへ HOMEへ