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 日常のありふれた音の記録です
2014年7月
2014年7月26日 例年どおり前日に慌てて予定を決め、陽が傾きかけたころ大急ぎで晩飯らしきものを詰め込んで出かける。最寄りの駅から電車を駆って1時間半。途中祭りのイベントをやっている会場が右手に見ながら、19:28川沿いの駅、金川に到着。でも時間の余裕が30分ほどしかない。打ち上げ地点は駅の下流の対岸。前日に地図で調べてみて、川を渡り少し下流に下ってみるつもりだった。ところが駅を出ると、川沿いの道路を渡る歩道橋は目前に見えるが、住宅が遮っていて道が分らない。結局予想外に遠回りしてやっと歩道橋を渡り、川を横切る長い歩道橋に入ったが、もうあまり時間がない。しかも対岸には歩道橋のすぐ近くにパトカーらしき赤い明かりが見える。そのあたりから立ち入り制限区域になるようだ。歩道橋にはカメラマンが2人、観客が数人いるだけでほとんどガラ空き状態。前方80mくらいに河を横切る堰があり、車の騒音もほとんど聞こえない。結局ここで録ることにして、橋の中央付近に陣取る。
Sample.mp3 1分49秒、2.09MB やはり距離があるので音はそれなりにソフト。頭上をジェット機が通過し、前方には堰を水が流れ落ちる音が聞こえる。悪くない雰囲気だ。右側を道路が通っているが車の音はほとんど聞こえない。人工ヘッド"Solomon"とPCM-D50で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
最初の1分くらいでレベルを決め録音開始。打ち上げ地点までは約900m。何だか距離の割にはソフトで小さな音、と思ったのは気のせいではなかった。やがて音量音質とも一変、あわててレベルを下げる。でも花火の音というのはレベルオーバーでクリップしてしまっても意外と分らない。空港が近いので、時々真上をジェット機が通過し、自分の照明でほのかに照らし出される機影がなかなかきれい。間に20分の長い休息をはさんで20:00〜21:00、2500発。のどかというかノンビリとした花火である。周りを山に囲まれた地形なので、花火のエコーはそれなりに出るが、もう少し欲しいところ。やはり距離が遠いためだろう。狭くて深い谷で花火を打ち上げれば、豪勢なエコーが楽しめそうだが、そんな所では危なくて花火なんかとてもできない。次回は対岸から録ってみるかな。予定を若干オーバーして21:00過ぎに終了。帰り道でも歩道橋から駅に出る道が見つからず右往左往した。ほとんどの道は住宅の駐車場で行き止まりになっている。でもやっと見つけた道は駅前の横断歩道に直結、けっこうな直通コースだった。

2014年7月21日 キャンプ場が草刈になってしまったので、少しばかり西にある谷を訪ねる。前を通る道路から眺めると民家が谷に密集しているように見えるが、中に入ると意外と空き地や畑が多くゆったりしていていて、谷の奥には貯水池がある。実はずっと以前に一度来たことはあるのだが、貯水池の西を通る道が草ぼうぼうで行き止まりになっていた記憶がある。その後ずっとそう思い込んでいたので訪ねることはなかったが、今回上ってみるとちゃんと舗装した道が通っている。もちろん舗装は中途で途切れるが、地図では山を越して南まで通じているようだ。谷が浅いので騒音は避けられないが、夏はほとんど気にならない程度に静か。それでも時々ドタ足の車や屁こきバイク、救急車の音が転がり込んでくる。静けさにもいろいろあって、怒涛のように攻め寄せてすべての騒めきを蹴散らす静けさもあれば、疫病のように忍び寄り密やかな音さえも飲み込む静けさもある。でももっとも本物らしいのは何も音のない静けさだろう。現代では稀有な静けさは貴重な商品だ。そんなものを作り出すことができれば、さぞかし鳴り物入りでやかましく宣伝されるに違いない。
Sample.mp3 1分24秒、1.61MB 平凡な静けさと平凡な音、詰まらないといえば詰まらないが、でも平凡な場所にはふさわしい。人工ヘッド"Pelias"とPCM-D50で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
山道を歩いているとよく転がっている物体がある。暗黒色の直径1cm程の糞状物体。大きさからして多分イタチの糞だろう。もちろんこのような滋味豊かな物体がそのままにしておかれるいわれはない。当然うまい汁を吸おうと生き物が集まってくる。ブツの色と形からして何やらイヤラシ気なムシが集まってきそうな気がするが、でも彼らはそんな悪食はしない。実直そうなハエを押しのけて我が物顔に糞の上に陣取り、うまそうにクサい汁を啜っているのはご覧のとおり。ものは見かけによるものだ。
これも山道でよく見かける光景である。オオモンクロベッコウに麻酔を施され拉致されるクモ。こののち巣に引きずり込まれ、卵を産み付けられて、生きながら幼虫のエサとなり貪り食われる。のどかな夏のお昼時。ヒルメシを食っていたら、突然現れた異界の生命体にドク針でグサリとやられ、家族があれよあれよと見守るうちに連れ去られて、滞空するウチュウセンに連れ込まれ養育器に収納。生命体の種子を注入されて、生きながら誕生した幼体の餌食となる。やがて宿主の体を食い破り、成長した異界の生命体が・・・というのはよくありそうなシチュエーションだが、こういうのを見ていると、あながち根拠のない空想とは思えなくなってくる。

2014年7月11日 台風一過、風は少しあるがまずまずの天気である。通り過ぎてみればどちらかというと見かけ倒しの台風、でもやはりそれなりに被害はある。台風を小さなうちに消滅させることができれば理想的だが、そんなことしたら何だかあとでもっと悪いことが起こりそうな気もする。どちらかといえば台風の被害は受けにくい土地柄とはいえ、真上なんか通過していただくのは有難くない。台風の目は一度だけ体験しているが、晴れた空とはるか周辺を取り囲む暗雲が不気味だった。もう一度見てみたい気もするけど、そんな願いはよしにしておこう。本当に叶ってしまうかもしれないから。本日は円張川。マイクをセットして道を歩いていたら大きなスズメバチにしつこく付きまとわれた。なにが気に入ったのか気に入らないのか。お怒りのご様子ではないが、ひたすら低姿勢で対応。不穏な行動を起こしてハチの限りある忍耐力を試してみる気にはなれない。
Sample.mp3 1分22秒、1.57MB 今年の梅雨、なんだかまだ雨が少ないような気がする。いつもの年より谷川の流れが貧弱だ。これからいよいよ本格的に降るのか。でも湿度100%、長雨に降り籠められる蒸し暑い梅雨はごめんだ。人工ヘッド"Pelias"とPCM-D50で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
梅雨といえばもちろん高温高湿度。レコーダーやマイクの管理には注意が必要だ。カメラのレンズなんか梅雨時にカビてしまうことがよくある。使わない時は乾燥剤を入れたケースか除湿庫に入れておけばいいが、問題は結露である。蒸し暑い雨模様の梅雨時の野外録音。たっぷりと冷房の効いた室内や車内から湿度100%近い屋外へあわてて持ち出す。冷えた録音機器はたちまち結露。昔のDATだとテープが走行不能になって回復には時間がかかる。マイクの結露もノイズ発生の原因になる、こちらは回復にはもっと時間がかかる。録音機器の温度を外気の露点温度より高めに保っておけばいいのだが、なかなか難しい。濃霧や水煙となるとさらに面倒だ。究極的には密閉してしまうほかはなさそう。コキ使ってナンボ・・・とはいっても、録音できなくなってしまってはどうしようもない。あまり無茶な使いか方はしない方がいいのだが、つい忘れたり無理をして時々そういう状況に落ち込んでしまうことがある。

2014年7月4日 いつものように出かけたが、途中でふと気が変わって180度方向転換、北に向かう。国道2号線を横切り、橋を通り過ぎてたどり着いたのは、1級河川の堤防沿いの県道の北50m。幅2m程の農業用水路である。以前来たのはたしか15年以上前と思うが、状況はほとんど変わっていない。用水路には揚水用の水車が4台。水車の台座は6つあるが、一つは水車が撤去、一つは使用廃止、もう一つは台座だけで本体はなぜか未設置。動いているのは3台で、そのうち1台は用水路の水位が低めなので動きは気まぐれ。もう一台は受け皿の穴が詰まっていて外にこぼれてしまい役に立っていない。残りの一台だけがひたすら水路から水を汲み上げて田んぼに流し込んでいる。水源は1級河川からの取水と山の貯水池からの流れだが、今の時期は貯水池の方が主になっているようだ。とりあえず動いている2台の近くにマイクを置いて録音。県道が近いのでしばしば車の通過音が入る。水車といっても実用本位のステンレスと鉄骨の金属製。水車の軸受けも無口で愛想のないピロブロックのベアリングである。昼間なのでしばしば入り込む車の音を除けば水の音だけ。深夜とか早朝に録音すれば静かだし、他の音も入って面白いと思うのだが、時間が取れない。
Sample.mp3 1分38秒、1.88MB 前半は左下の画像の位置で録音。せっかく汲み上げた水も、受け皿の排水口が詰まっているので、すべてこぼれ落ちて無駄になっている。後半は右下の画像の位置(実際はもう少し左寄り)で録音。こちらは水車の両側にバケットがついているが、マイクとの距離は少し遠くなる。人工ヘッド"Pelias"とPCM-D50で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
ここの水車は田んぼへの揚水用。動力源はもちろん水路の流れだが、昔は人力で動かすものもあった。足踏み式で、程よい高さに設けられた木枠につかまり、ひたすら足で漕ぎまくる。無限階段を登っているようなもので結構な重労働だ。軽いランニングくらいにスピードを上げてスポーツクラブなんかに設置すれば効果満点だが、頻繁にヒトジニが出そう。ところでこれ、形は水車そのままだが、本当に水車と呼んでいいのかどうか。ダムからの水流で発電機を回すのは水車だが、発電した電力でダムに水を揚げるのはポンプである。水の流れを動力に変えるのが水車。でもこれは動力を水の流れに変える一種の揚水装置である。よく分からん。調べてみると踏車というもので、いちおう水車ということらしい。でもやっぱり良くわからない。水車自体いまはエンジン付きのポンプに代わってしまい、めったに見られない。
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