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 日常のありふれた音の記録です
2011年11月
2011年11月22日 寒さが急に厳しくなり、今年初めての霜が降りた。融けた霜で靴が濡れるのは覚悟でまた上山田まで出掛けた。前回からマイクと録音機を2セット持ち歩いている。ただバッグが1セット用のもので少し大きめだが、2セット分入れるには少し窮屈。といって、2つのバッグを肩から掛けて歩くのは何となくみっともない感じである。澄み切った空ではないが、何となく宇宙的邪悪さを感じさせる、異様に雲ひとつない晴天。まだ地上の温度が上昇していないので、遠く離れた道路からの騒音か山を越してやってくる。しばらくは山を降りて、静かな集落の奥の畑と、下の池の堤防の端で録音。ところが堤防の方は−20dBのアッテネーターを入れていたのを忘れてそのまま録音してしまった。メーターのレベルがいやに低いので変だなとは思ったのだが、意外と気付かないものだ。でも結局音源が予想外に至近距離まで接近してきたのでこれで良かったという感じである。いくら経験を積んでも偶然の要素の大きい環境音では、最適のレベルセッティングはなかなか難しい。地温が上昇してきたので山道の方でも録音してみたがあまり成果なし。帰り道でとりあえず間に合わせにと、録音機とマイクが2組分入るバッグを980円で買ってきたか、薄手で少しばかり大きすぎてダブつくという感じである。ゆっくり時間をかけて探したほうがよさそうだ。
Sample.mp3 1分00秒 1.14MB 上山田の一番下の池の堤防の上で録音。間違って−20dBのアッテネーターを入れたまま録音してしまったが、予想外に音源が接近したのでそれでよかった、というか怪我の功名。レベルは多少低めになっているが、そこは24bitでなんとかなっている。小型マイク"Kalivan"とPCM-M10で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
立体音響用のマイクは相反するかなり厳しい条件が要求される。小口径、ローノイズ、高耐入力、ワイドでフラットな周波数特性、高音質、耐候性。小口径のラベリアマイクはワイドでフラットな周波数特性と耐候性では有利だが、ローノイズ・高音質とは両立しがたい。公称20dB(A)のPCM−D50の内蔵マイクはノイズの点で環境音には厳しかった。B3は24dB(A)だか立体音響に使用ということもあって、こちらの方が実感上やや小さめ。PCM−M10の内蔵マイクのノイズは公表されていないが、PCM−D50よりずっと小さく、環境音の録音でもほとんど気にならないレベル。4060のノイズは23dB(A)だが実感上はさらに小さい。ノイズの性質も用途も再生音量も異なるので一概に比較できないが、そんな感じである。

2011年11月14日 今日は暇な一日である。ホントはやることはいっぱいあるのだけれど、面倒くさいからないことにして出かける。円張から上山田、鹿忍を通って海まで出てみた。この季節としては薄着で出たので寒いかなと思ったが、だんだん暖かくなってきてちょっとした小春日和。行く先々でウグイスが鳴き、椿や山茶花が咲いているので、本当に春が来たような気分になってきた。海まで来るとまずはヒルメシをあつらえて、小高い丘の道路わきのコンクリートブロックに腰掛け昼食とする。この辺りも随分変わってしまって知らない道である。知らない人が知らない顔を窓から向けて車が通り過ぎていく。午後からは裏通りを通って海水浴場に出る。向うの堤防に列を成す釣り客をのぞけば、本当に人っ子一人いない海。ときおり後ろの道を車が通り過ぎ、沖合いを船が横切る。少し離れた表通りの喧騒とはまるで別世界、聞こえるのは波と風の音だけである。
Sample.mp3 3分19秒 3.80MB 最初の2つは円張川で、3番目は上山田の一番下の池の辺で、最後は海水浴場の砂浜に打ち寄せる波。ただこれを聞くと、やるべきことが多く残っていると感じる。まだまだ先は長いぜ。小型マイク"Slivikin"と"Kalivan"、PCM-M10で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
交換したDPA4060、まずは快調である。心配したノイズはほとんど問題にならないレベルだ。深夜に照明を落とした室内で離れた所にある時計の音を録音したりするとはっきり分かるが、このときの再生音量は実音量よりはるかに大きいレベルである。ノイズを気にする向きもあるようだが、幸いボクの場合は今までのところそういう情況には出会わないようだ。
ところでこのマイクは感度別に4060、4061、4062、それに低電圧モデルの4063とシリーズになっているが、歪み率1%の音圧はどれも123dBSPL(ピーク)である。どうもマイク本体は同じで、内蔵のアンプのみゲインや動作電圧が異なっているようだ。ノイズは低感度モデルほど増加するが、アンプのノイズの影響が大きいのだろう。低感度モデル、超低感度モデルではアンプの設計次第で、4060並に低雑音になる可能性がある。自分自身の電圧で出力するDPAの方式は、ノイズの点では必ずしも有利とは言えないようだ。ただ低感度モデルでは耐入力は上がっても、同じ音圧での歪は同じなので、その点では期待できない。低感度モデルの4061で録音されたソースでは、音量の大きい音源で多少歪感を感じるときもある。
ぜいたくを言えばキリがないが、ラベリアマイクは用途に合わせて周波数特性を特化したものも多く、利用できる選択肢はあまり多くはない。4060シリーズはその少ない選択肢の一つなのである。

2011年11月9日 10月の寒さで鳴き始めた鶯が11月の初めの異様な暖かさで影を潜めていたが、やっと平年並みの気温に戻り、再び鳴き始めた。9月に熱を出して寝込んでいた我が家の極悪安物猫もしだいに活性化。西からやって来た高級そうな性悪猫と取っ組み合いを演じて川にドボン。寒さがぶり返すとネズミ狩りモードに突入。近所の田圃をうろつきまわっては子ネズミを狩り出し、前足の肉球をすり減らしている。まあ元気で、いいか。
久しぶりに上山田方面へ出掛けてみた。前回来たのはたしか春ごろだったっけ。山道の途中に市の境界があって、こちら側はまだ草刈りがすんでいないが通れないほどではない。しだいに曇りがちの天気になり、昼前まで録音して引き上げる。夜はまた寒くなりそうだ。
Sample.mp3 1分32秒 1.76MB おなじみの晩秋のウグイスだが、いまひとつ物足りない気はする。来年は暖かければ2月半ばには鳴き始める。ニッパチならぬ1月と9月がお休み。忙しいこった。小型マイク"Slivikin"とPCM-M10で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
7月の末に完成した小型マイク、ノイズが気になっていたが、マイクユニットをB3からDPAの4060に交換した。結果は上々。B3の24dB(A)に対して4060は23dB(A)と1dBの差しかないが、聴感上はそれ以上に大きな差を感じる。これはメーカーのスペックの表記の問題もあるが、ノイズの周波数特性の違いも大きく影響しているようだ。B3は低域に向かってノイズのレベルが上昇しているので、実際の音量以上に再生音量を上げがちな静かな環境音の録音では、ラウドネス効果が効いて不利になる。4060は逆に中高域のノイズレベルが高く、頭部や耳の形状効果で中高域のレベルが上昇しがちな立体音響では逆に有利。B3がマイクそのもののノイズが主なのに対し、4060ではアンプのノイズが大きい割合を占めるようだ。低感度タイプになるほどこの傾向は顕著になる。
9月にはすでに交換を検討していて数機種の候補があったが、実際に使ってみないとなかなか正体がつかめない。4060は同系統の低感度モデル4061で録音された、録音時の状況の分かる、環境音を含むソースが手元にあったので有力候補だった。ただ困ったのはこのマイクの動作がよく分からないこと。出力インピーダンス30〜40Ωとあるので、内部はFET一個だけという単純なものではないらしい。いろいろ調べた結果、2端子型で電圧出力タイプであることが判明、採用に踏み切った。自分自身のために約2.5Vの電圧を確保し、それを中心に最大音圧時にピークで±2V程度を出力するようだ。電源の電圧は少なくとも5Vは必要、実用的には9Vのバッテリーになる。直列に入れた抵抗でアイドリング電流を設定し、マイクの両端からコンデンサーを介して出力を取り出す。最大音圧レベルは134dBSPL(クリップ)とB3よりやや高め。マイクケーブルは単芯のシールド線で、シールドは編み線ではなく単方向に平行に巻き付けたもの。ケヴラー繊維が芯線とシールドの間に入っていて丈夫だが、導体そのものは割りと柔らかい感じの普通のもので、あまり頻繁に強く屈曲させるのは避けたほうが良さそうだ。芯線の被覆は半透明で意外と熱に強く、ハンダ処理は楽だった。
2種類のハイエンドをブーストするキャップが付属していて、ソフトブーストタイプが標準状態で装着されており、周波数特性はフラットではない。キャップを取り外した状態で周波数特性が完全にフラットになるのかどうかは不明。キャップは目の粗い金網のみで粉塵に対する防塵効果はない。
4060はプラグインパワーでは正常に動作しない。外部電源が必要なので新たに制作。屋外での使用に合わせて小型軽量にと、電源はボタン型リチウム電池CR2032×3の9V。他には抵抗と電解コンデンサーとミニジャックのみのシンプルなもの。アイドリング電流を決定する式があったのだが見失ってしまったので、録音機の入力インピーダンスに合わせてギリギリの値に設定して制作。最小限の大きさのケースに無理矢理詰め込んで画像のようになった。ただあまりにもスシ詰め状態なので、断線した時のケーブルの交換が容易ではない。これはそのうち作り直したい。バッテリーも最大放電電流の3mAをちょっとオーバーして、電圧降下と動作時間が心配。70時間程度の動作を期待しているが、使ってみないと分からない。もっと容量の大きいバッテリーを使いたいのだが、そうすると大きさも重さも2倍以上になってしまう。
通常はマイクケーブルと録音機の間にぶら下げて使うが、移動しながら録音するときのために三脚ネジで録音機に固定するアダプターも製作。これにマジックテープで貼り付ける。屋外専用なのでノイズ対策やシールドはなにもしていないが、出力インピーダンスが低いせいか室内でもあまり問題はないようだ。
ノイズの問題で2ヶ月近く無駄にしてしまったが、とりあえず問題は解決。あとに人工ヘッド付きのマイクの制作も控えているのだが、しばらくはテストも兼ねて少し録音に時間を費やしてみたい。
B3は静かな環境音の録音には少々厳しかったが、なにより安価で、プラグインパワーでも耐入力がほとんど低下しないのは魅力。低感度タイプのB3(Red Band)は耐入力が150dBSPL(クリップ)と高く、ノイズレベルは高感度タイプと変わらないので、爆音用として使ってみたい気はする。
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