前回の「The Otophonic Gadget 2007」はCD−Rだったが、今回は本格的なプレスCD。デザインもいっそう洗練されたものになった。全69トラック、トータルタイム73分50秒。現在、Otophonicsの全貌をうかがい知ることができる唯一のCDといってよい。さまざまな音源を網羅した内容は前作と同じだが、共通なのは30トラックのみで、残りの39トラックは新しい音源に置き換えられ、または新しく追加されている。なくなって残念な音源も少なくないが、それ以上に多くの音源が追加されており、よりバラエティー豊かなものになっている。前作を手にしていない人はもちろんのことだが、すでにお持ちの人も手に入れておいて後悔はしないだろう。
一聴して分かるのは、「The Otophonic Gadget 2007」ではわずかに感じられた微妙な癖がなくなり、空間の透明感がさらに向上しているということ。興奮気味というより、むしろ本物の音に接するように自然に楽しんで聞いてしまった。主題となる音よりも、環境ノイズと言って良いような音から感じる周辺の環境や雰囲気、地形あるいは室内の様子、といったものの方に興味を奪われてしまうのである。これは優れた音場と音の再現能力がなければなかなか難しいことだ。
Otophonicsさんの「Otophonicscape」は立体音響を代表するものとして、「これが立体音響だ!」と誰にでも安心して薦められるものである。目だった欠点がないといった消極的なものではなく、あらゆる面でトップクラスの優れた再現性を持っている。というよりもボク自身はOtophonics以上のものをまだ耳にしていない。それがOtophonicsなのである。一つだけ心配なのはOtophonicsを聞いてしまったら、もう後がないということ。Otophonicsの次はまたOtophonicsをということなのである。Holophonics「アルデバラン」とともに、ボクにとっては他人に譲れない貴重なソフトとなった。
実をいうと、Otophonicsさんは立体音響ではボクの先輩なのてある。ホームページの開設はボクが先だが、Otophonicsさんが立体音響手を染められたのはボクより数年早い。以来二十数年間、Otophonicsさんはずっと地道に研究を続けてこられた。途中決して短くはないブランクのあるボクと比べると、その差は今でも随分大きいと思っている。 |