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 日常のありふれた音の記録です
2011年8月
2011年8月20日 わが家の極悪猫、1月にワクチンの注射に行ったら異常発覚。心雑音、心電図異常、頻脈。主治医の先生曰く、余命いくばく。2月になって心臓に詳しい病院で一度見てもらったらと紹介され、遠くの病院まで足を運んだが、結果はさしたる異常もなく原因不明。様子を見ること数ヶ月。どうもストレスが大きな要因の一つのようだ。西の方角に猫が激増しているのである。しかもこれからいよいよ凶悪化しようという若い猫ばかり。西は鬼門である。現在は平年並みに回復してまずまず好調だが、来春がまた心配。過度なストレスは本当にコワいのである。
おかげで予定が大幅に遅れに遅れ、更新も滞ったままになってしまった。実に7ヶ月ぶりの復帰。拙サイトをお訪ねいただいている皆様には、重ね重ね申し訳ない次第なのである。
7月の末にマイクがやっと完成。頭部を持たない小型のIsophonic microphone ”Slivikin”と”Kalivan”である。小型・軽量を生かしたサブ機として使用する。この小型マイクのアイデアは、実はボク自身のものではない。むかしオーディオ誌でアメリカにストッキングの中に入るような小型のマイクを制作している人がいると紹介されていたのと、1990年代初頭に一時八幡書店からソフトを出されていたヘンリー川原氏のヴァーチャルフォニックスのマイクがヒントになっているが、両方とも実物は知らない。今回は実用機としては2世代目になる。まだまだ性能向上の余地はあるが、それは次の機会に譲りたい。多分4〜5年はかかると思う。
このマイクは、人工ヘッド付きのマイクと比べると、頭部によって得られる情報が欠落しているのは明らか。耳の形も耳甲介腔のみを模倣したもので、それも人間の耳の形とはすいぶん異なっている。人工ヘッド付きのマイクに比べて、特に片耳モノーラル再生で左右方向の再現に差が出る。しかし普通に聞いている限り、その違いはほとんど分からないと思う。制作した本人でも、かなり綿密にテストしないと判別は難しい。小型で目立たず、軽量で持ち運びが容易、比較的簡単安価に制作できることを考えると、実用性は高い。
今回利用したマイクは比較的ローコストなCountrymanのB3、プロ用のラベリアタイプ(タイピン型)で、ファンタム電源仕様である。これからマイクカプセルを取り外し、というより線を適当な長さにブチ切ってそのまま使用。マイクカプセル側は樹脂で固められていて分解できなかった。先端のハイエンド調整用の標準キャップは取り外す。この種のマイクとしてはごく平均的なものである。
使ってみて少し不満を感じるのはノイズである。楽音の収録などには問題ないが、静かな場所での環境音の収録では気になってくる。小さな音を聞き取ろうとボリュームを上げてしまうからだ。もう10dB・・・は無理としても、せめて5〜6dB低ければと思うが、各社ともスペック上大差はないのでほとんど選択肢がない。多数購入した中からノイズの少ないものを選別するか、高価なマイクを選べば2〜3dBは低くなる可能性があるが、そこまでやる気はない。ときどき転倒させて破損したり水没したりする、消耗品と言ってもいいようなマイクだからである。成極のために外部から高電圧を供給するマイクはノイズが小さめだが、雨に濡れる野外では使いたくない。マイクカプセルの口径をもう少し大きくすればノイズは小さくなるが、これも適当なものが見当たらないし、カプセル内のキャビティーが大きくなるので、音場の再現性は多少低下すると思う。
取り外したファンタム電源用の回路は使用できるようにする予定だが、多分今後使うことはないだろう。代わりにマイクカプセルに正規の電圧を供給するバッファアンプ付きの電源を使用する。PCM−M10の背面に三脚ネジで固定し、一体化する構造である。最終的にすべての周辺機器が揃うのは9月に入ってから。システムとして完成するのは多分数年後になる。
ひとつ困っているのが三脚。十分な重量があって、縮長が短く、伸長が高く、動きがスムースで耐久性がある、できればエレベーターも付いている、というものが欲しいのだが見当たらないので、MDの時代のものをそのまま使っている。軽量なので風で転倒しやすく、伸長が低いのが難点。昔はあったのだけれど。実は中古で手に入れた割と要求に近いものを2つ確保しているのだが、モッタイナイから使わない。
Sample1.mp3 2011年8月6日 2分35秒 2.46MB 岡山市の花火大会である。庭園のある川の中州の南端で録音。打ち上げ地点の中洲との距離は700mほど。3年前と比べると観客の反応はいくらかあるが、以前とは雲泥の差。静かな花火だ。小型マイク"Slivikin"とPCM-M10で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
マイクの完成に合わせてPCM−M10を2台購入。現在では他にも魅力のあるメモリーレコーダーが多数発売されて、選ぶのに困るほどの盛況だが、バッテリーの駆動時間、小型で堅牢、使いやすさといった点で、以前からの予定通りこの機種になった。バッテリーの駆動時間は十分過ぎる程。録音のボリュームの回転が硬めになったのも個人的には歓迎。内蔵マイクは無指向性でノイズが意外と少ない。これなら環境音の静かなシーンでも十分実用になりそう。持ち歩きながら録音することも考えて、首から吊るす長いストラップを取り付けている。一つだけ注文があるとすれば、タイマー録音機能を付けて欲しいこと。これはあると便利である。
というわけでやっと一段落といったところだが、9月からは再び人工ヘッド付きのマイクの制作に入る。もちろんこちらがメイン機。遅くとも来春までには完成の予定である。ただし予定は未定で確定にあらず。使用するマイクも再検討しなければと思っている。またしばらくのご無沙汰になるかもしれない。
Sample2.mp3 2011年8月17日 53秒 1.02MB 川の中洲、というより2つの川が合流する地点にあるサギの営巣地。周辺は木と竹薮が密生していてまったく見通しがきかないが、中は意外とすっきりしていて、地面の大半は人の手で等間隔に植えられたような植物に覆われ、花を咲かせている。糞で白く変色した植物と養鶏場のような臭い。ハトくらいの大きさのサギの雛の裸の死体が地面に転がっている。歩いているうちに、靴には何やら異臭を放つ粘つく物体が付着。深入りはしないつもりだったが、何時の間にか中心部に到達してしまい、帰り道に迷って出られなくなった。小型マイク"Slivikin"とPCM-M10で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
ICR−PS501RM。すでに購入して2年以上使用。CDの録再をすると本格的なメモリーレコーダーとは差が出るし、録音フォーマットも44.1kHz16bit止まりで、内蔵マイクも価格相応。しかし生録用として外部マイクで使ってみて十分実用になるし、何よりも小型軽量、手軽で軽快。この便利さは捨てがたい。
タイマー録音機能も便利。最近のものはハイビット・ハイサンプリングレートにも対応しているので、性能の良いものが出て来れば本格的に使ってみたいのだが、各社ともローエンドが伸びきっていないのが難点。ほとんどが40Hzまでである。本来のICレコーダーの用途を考慮してのものだろう。低域の特性を選択できればいいと思うのだが、他に理由があるのかもしれない。低域の延びでリアリティーがかなり違ってくる。
タイマー録音機能は便利なのだが、少し困ることもある。手動で録音を開始するとタイマーでは停止できないのである。タイマーの設定に関わらず手動操作を優先するという方針のようだが、任意の時間に即座に手動で録音を開始して一定時間後または一定時刻に停止したいということはよくある。もう一つ困るのは、冬季には静電気の影響で時刻の設定が飛んでしまうこと。
この録音機、実は一度三脚を転倒させて数十分間ドブ川に水没させている。もちろんマイクもいっしょに水の中。マイクはマイクカプセルを交換。録音機もそのまま脱水して乾燥させたら一応動くようになったが、なんだか動作がおかしい。改めて内蔵マイクを避けて清水で洗浄して脱水乾燥、やっと正常になった。2年ほどで録音したファイルは10000、90GBを超えた。わりと酷使しているという感じだが、まだまだ当分はコキ使えそうだ。
 
Otophonics Factory Otophonicsさんがご自身のサイトに復帰された。たいへん長い間サイトの更新を休止されていたが、その間研究に専念されていたということで成果が楽しみだ。ボク自身、今回のマイクの制作は以前からの計画だったのだが、こんなに長い時間が掛かってしまったというのも、Otophonicsさんを意識するところが大きい。立体音響は大変時間のかかる分野である。Otophonicsさんもボクも時間の不足には悩まされているが、企業や研究機関が専念すれば格段に効率が良くなるのかというと、そうとばかりは言えない面がある。個人的な作業になる部分が多いし、聴覚のリセットが必要なので長時間の連続した作業は無理。正常な音の認識を見失って良い結果にはならない。それ以前にまったく採算の合わない作業なのである。だからOtophonicsさんにはずっと研究を続けていただきたいと思うし、ボク自身もそうしたいと思っている。Otophonicsさんはすでにいくつかの仕事をされていて、その成果を耳にされた方もいらっしゃると思う。今後も期待するところは大である。
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