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ちょっとそこまで
2023年5月5日
世は5月の連休後半真っただ中。でも所用に紛れて旅行なんてずいぶん長い間出かけていない。前回はたしか15年前が最後。それに最近はお年寄りの散歩向きの緩やかな道ばかり歩いているのでいささか運動不足。たまには歩きでのする道を歩いてみたい。というわけでもないがこのままではいささか口惜しいので、ちょっとそこまでという感じで近場に出かけてみることにした。JRの伯備線は美袋駅から北に上り志鳥谷川へ。じつは2008年に7月と9月の2回尋ねていて今回は4回目。谷が長くて適度に拓けていて車がほとんど通らず人のやって来ないマイクを置ける広い場所がある。山の中でマイクなんてどこにでも置けそうな気がするが、こういう山道では道の両側はたいてい転げ落ちそうな急斜面。道幅もギリギリしかなくときどき車も通るので、よほど場所を選ばないとなかなか好き放題には置けないし散歩などもってのほか。ここにはそんな好都合な場所がある。
始発の列車でJRの捕囚となり、07:17美袋着。朝の閑静な街路を通って北に進み、JRの踏切を渡って谷の入り口の集落に入ると鉄道の撮影の人が小さなコンパクトカメラを取り付けた三脚を据えている。ここで路線はすぐに北側の山の短いトンネルに入るのである。
集落を通り過ぎて少し進むと大きな砂防ダムに出くわしていつも面食らうのだか、谷が深いので降雨時には結構水量は多いのだろう。さらにその先の分かれ道を左に進んで谷川を渡り、ダムのある池の北側の道に入る。道はダムまで続いていてそこで実質行き止まり。前々回はダムの北側の階段を上って下流側から入ったのだが、今回は橋を渡って上流側から。うっかりよろけて足を踏み外せばそのまま4mほど下の池の水面にドボンの、ダムの上の幅1m足らずの狭い通路を荷物を抱えて恐る恐る通った記憶が残っている。
Sample1.mp3 4分00秒 4.59MB 一番下の貯水地の北の道で録音。まだそれほど遅い時刻ではないのでそれなりに賑やかだ。JRではここにたどり着くのは午前8時過ぎが限度。人工ヘッド"Pelias"とPCM-D100で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
舗装された道は軽トラが通れるギリギリの幅。途中に3ヶ所狭い待避所があるが方向転換は難しそうだ。もし車でダムのそばまで入り込んだら、引き返すのはなかなかに難渋しそう。途中で谷側へ転落する可能性大である。そういう話は時々聞いたりもする。さいわい最近車が通った形跡がまったくないのはこちらにも好都合。待避所の一つにマイクをセットしてあとはその辺りをのんびりとお散歩。この場所にはトカゲと煤けた褐色の地に小さな白く丸い斑点が2つのハンミョウが多いのだが、ハンミョウの方は調べても何なのか名前がよく分からない。藤と桐の花があちこちで満開。気が付いたらマイクのすぐ後ろも桐の木で地面に薄紫色の花が落ちているが、枯れ枝が落ちてこないかちょっと心配だ。録音中に谷の向かい側の道を車が3台ほど通り過ぎ、谷の入り口のJRの路線からは電車の通過音が響いてくる。この辺りはまだ谷の入口に過ぎないのである。
Sample2.mp3 4分50秒 5.53MB 一番下の貯水地の北の道で録音。それほど谷に入り込んだ場所ではないので、下からの列車の通過音が聞こえてくる。人工ヘッド"Pelias"とPCM-D100で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
途中でレコーダーのバッテリーを交換してつつましいヒルメシを食らい、昼前に録音を切り上げて12:00過ぎに出発。ここから谷の北側の道を上り、正村を経由して本村に到着。そこから菅に下りて再び志鳥谷川の南の道を下るのが本日の予定で、まずは正村までの上り坂だかこちらは今日が初めてだ。道は舗装がされているものの軽トラがどうにか通れる程度の道幅で、斜面から転がり出たごろた石と枯れ枝があちこちに散乱している。右の路肩はほとんどが急斜面でガードレールはなく、うっかり路肩を踏み外せば車も人も数十メートル下の谷底まで転がり落ちて大破になりそうな場所が随所にある。生来高いところが苦手なオイラとしては戦々恐々。谷底をのぞき込むなんてとんでもない話で、ひたすら道の右端を避けて歩く。山の上の方には杉と檜の植林が多いが、杉の方が大半のようだ。
Sample3.mp3 3分18秒 3.79MB 一番下の貯水地の北の道で録音。うれし気に飛び回るハエの音が楽しい。人工ヘッド"Pelias"とPCM-D100で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
そのうち辺りに人の住んでいる気配らしいものが見えてきて、やがて正村の集落と思しいところに到着。もっとも集落とは言っても、集会所はあるものの道沿いに数軒の家が距離をおいて散在しているのが見えるばかりで、実体が良く分からない。
Sample4.mp3 2分11秒 2.50MB 一番下の貯水地の北の道で録音。いい場所なのだが意外と航空機の通過が多い。人工ヘッド"Pelias"とPCM-D100で録音。(すべての音響効果をOFFにして、ヘッドフォンでお聞き下さい / Please turn off all of sound effects and use a headphone)
さらに左の樹木越しに広い裸地を見ながら進むとやがて十字路に出くわして、そこには道しるべの看板が立っている。地図でみるよりもやたらに枝道が多く、何が何だかさっぱり分からない。看板の矢印の一つには「菅」とあるが、ここからの道ではなく本村からの道を下る予定なので取りあえずパスしてそれらしき方向に進む。
まもなく本村に到着。こちらは道沿いに神社や広場もあり、見通しが良く見かける家の数も多いが、やはり広い範囲に散在している感じで集落の実体がどうなっているのか良く分からない。ここから菅への道を下るのだが、杉の植林の中の道を下り左手の樹木越しに石切り場の跡が見えてきておかしいなと気がついたときには既に遅し。ひと山超えて予定とは真反対の北にある大谷川沿いの広い道に出てしまった。これから引き返すのにはちょっと時間不足。仕方がないので帰りはこちらを下ることにした。桜の並木のある広い道であまり面白みはないが、石切り場のある辺りから道は狭く急になり楽し気に曲がりくねって目を楽しませまんざら悪くもない。
やがて平野がちらほら見えるあたりに到着。まだ少し時間に余裕があるので脇道に入って、しばらく行き止まりの道の端で録音。でも午後も遅く、平野からの騒音も多いのでどうしようもない。30分ほどで切り上げて帰り道を急ぐ。志鳥谷側からずっと一巡りこの辺りを歩いてみて気が付いたのは、イノシシ除けの柵が一つも見当たらないこと。イノシシの箱罠やくくり罠はあるにはあるが、箱罠は2つ見ただけでどちらも錆び付いて休止中。くくり罠の表示の白い札を見たのは一度だけである。狩猟が盛んなのかな。
道を下り国道に出て山の端をぐるりと回り、あとは平野に入り込んで線路沿いに駅までの道をたどる。午前中は曇りがちだった天気も回復して、遅い午後の光が街路の家々に当たりなかなかきれいだ。駅に到着したのは電車の発車時刻の15分前。帰りは直通なので至って気楽である。17:47に最寄りの駅に到着して放逐され家路を急ぐ。
なんだか半日歩いてばかりで終わってしまった感じだが、時間が取れれば5月中にもう一度、志鳥谷川だけということで来てみたい気もする。 
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